部屋が汚いから掃除しなきゃいけないし、食器も洗わなきゃ…
でも、心と身体がついていかなくて辛い…
こんな悩みに答えます。
うつ病になると、「やらないといけない家事があるのに、だるくてできない…」ということが増えてきませんか。
決してやる気がないわけではないのに、家事ができなくてどんどん溜まっていくという状況は、本当に辛いものです。
家事をしたい気持ちはあっても、身体と心が付いていかなくて焦るんですよね
本記事では、うつ病で家事ができない時の乗り切り方について、実際に家事ができなくなって苦しんだことがある元患者の私が解説していきます。
この記事を読めば、うつ病になって家事ができなくなる原因や無理なく乗り切るコツが分かります。
また、家事に対する精神的な負担感も軽くなるでしょう。
うつ病で家事ができなくなるのはなぜか
うつ病で家事ができなくなる大きな原因は、「エネルギーが減退するため」の一言に尽きます。
エネルギーが減退すると、下記のような様々な力が低下します。
- 体力
- 気力
- 思考力
- 記憶力(主に短期記憶)
- 判断力
- 集中力
うつ病になる前まで何気なく行ってきた家事は、実はエネルギーを使う複雑な作業の連続。
知らず知らずのうちに、精神的・身体的にエネルギーが大量消費されているのです。
さらに、エネルギーの低下が激しい場合は、家事に対する意欲そのものも湧かず、取り掛かることすら難しくなります。
例えば「料理」とひとくくりにされる家事も
- 献立を決める
- 手順を考える
- 具材を切ったり煮たり焼いたりしながら主菜・副菜・汁物などを同時並行で作る
- 味付けをする
- 合間に調理器具の洗い物をする
- 盛り付ける
- 配膳をする
- 後片付けをする
と複雑。
「うつ病になってから料理ができなくなった…」という人は、エネルギーの減退によって
- 献立を決めたり味付けを決めたりするための「判断力」
- 作り続けるための「体力」「気力」「集中力」
- 同時並行で作業を進めるための「思考力」
- どの工程をどこまで行ったか(どこまでやるか)を覚えておくための「記憶力」
といった力が低下しているのです。
また、「掃除」「洗濯」「買い物」といった他の家事も「料理」同様複雑な作業の連続なので、エネルギーが減退していると行うことが難しくなります。
私自身、うつ病がひどくて家事ができない時期がありました。
料理教室に通っていたにもかかわらず、ご飯を作る手順が分からず立ち尽くしたことも…
うつ病で家事ができない時、乗り切るための2つのポイント
うつ病で家事ができない時を乗り切るためのポイントは以下の2つです。
- 完璧を求めない
- 1人で頑張りすぎず、頼れるものに頼る
少しずつでいいので、2つのポイントを意識してみるようにしましょう。
責任感が強く、これまで常に完璧を求めて人に頼らずにやってきた人は、上記2つのポイントに抵抗を感じるかもしれません。
「1人で完ぺきにこなそうとする」という姿勢そのものは、とても素晴らしいです。
しかし、うつ病でエネルギーが減っている状態でも、常に完璧を求め続けて誰にも頼らずに家事をすると、ますます疲れてしまいます。
家事ができないのは、怠けているからではなく、うつ病でエネルギーが切れているから。
決して、1人で頑張りすぎないでください。
そして、自分を責めず「エネルギー切れの自分に優しくしてあげよう」という気持ちで、2つのポイントを意識してみましょう。
自分にそこまで厳しくしなくてもいいんだ…!
意識できるようになると、エネルギーの消耗を抑えることができるので、家事だけでなく普段の生活もかなり楽になってきます。
うつ病で家事ができない時の乗り切り方
では、うつ病で家事ができない時の乗り切り方について、先ほど挙げた2つのポイントを踏まえて紹介します。
- 先延ばしにする
- まず少しだけやってみる
- 家事のハードルを下げる
- 効率化する
- 家族や友人の助けを借りる
- 家事代行サービスを利用する
ひとつずつ解説していきます。
うつ病で家事ができない時の乗り切り方① 先延ばしにする
まず、うつの症状がどうしてもしんどい時、今すぐしなくてもいい家事は先延ばしにしましょう。
あなたが「すぐやらなきゃ…」と思っている家事、本当に今すぐにやらなきゃいけないのか、振り返ってみてください。
例えば、「週3回の掃除」のように「自分で決めたルーティンでやっているだけで、それほど部屋は汚れていなければ実は急ぐ必要はない」というものもあるはずです。
どうしてもしんどいという時は、ルーティンよりも休養が最優先。
これまでルーティンを厳守してきた方にとっては、少し勇気のいる判断かもしれませんが、先延ばしにした分は調子のいいときに改めて行うか、その次にやる予定の日まで延ばしたまま(1回スキップ)でも大丈夫なことも案外多いものです。
うつ病で家事ができない時の乗り切り方② まず少しだけやってみる
いくらか身体が動く状態の時は、「5分だけ食器を洗う」「机の上だけ掃除する」という感じで「少しだけやってみる」ようにすると負担感が軽くなり、取り掛かりやすくなります。
仮にうつ病でなかったとしても、私達はやらなければならないことが目の前にあると、考えるだけで大きな負担を感じてしまうもの。うつ病でエネルギーが減っている時は、その負担感がさらに大きくなります。
始めから「食器を洗ったらシンクも掃除する」「部屋全体を掃除する」など無理に大きすぎる目標を立てるのは逆効果。「少しだけやってみよう」と考えた方が、いつの間にか10分以上食器を洗えていたり、想定より広い範囲で掃除ができていたりすることもあります。
また、「食器を洗えたのは5分だけ」「布団周りを掃除しただけで疲れた」という結果であったとしても、する前よりはやるべき家事を片付けることができているのは事実です。
エネルギーが減っている中で家事をした後は、「辛い中、私はよく頑張った」と自分を褒めてねぎらいましょう。達成感が生まれ、次の行動への意欲が生まれてきます。
成果の程度は無視して、まずは褒めて!
うつ病で家事ができない時の乗り切り方③ 家事のハードルを下げる
うつ病で家事がしんどい時は、「ハードル」を下げることも重要です。
患者さんの中には
「おかずは最低2品全て手作り!」
「ほこり1つないくらいに隅々まで掃除機をかけないと気が済まない」
と家事においても完璧を求めないと気が済まない方もいるのではないでしょうか。
しかし、うつ病ですでにエネルギーが消耗しているのに以前同様に完璧を求めることは、エネルギー切れで後々寝込む原因、逆に負担感が大きくなって取り掛かるのが難しくなる原因になります。
家事に取り掛かる際は、「100%完璧」を目指さずにハードルを下げ、「ほどほどにできればいいや」くらいの気構えで臨めるようにしてみましょう。
「おかずが1品の日があってもいいし、スーパーのお惣菜やレトルトも取り入れてもOK」
「自分がよく使う箇所だけ重点的に掃除して、他はできる範囲でやろう」
という感じで考えることができれば、取り掛かる際の精神的な負担感、家事を行う時の疲れを減らすことができます。
多少適当でも大丈夫!
うつ病で家事ができない時の乗り切り方④ 効率化する
今行っている家事を振り返って、効率化できそうな部分があれば、積極的に進めていきましょう。
以下、効率化できる例をいくつか挙げておきます。
- 形状記憶のYシャツを着る ⇒ アイロンがけの時間を減らす
- おしゃれ着洗いの服はなるべく着ない ⇒ 洗濯の手間を減らす
- 買い物は通販を有効活用 ⇒ 買い物に行くエネルギーと時間の節約
- 献立をパターン化 ⇒ 献立を考えるエネルギーと時間の節約
几帳面な人には抵抗を感じる部分があるかもしれませんが、家事をより確実に行いたいのであれば、「元気になるまでの間だけ」と割り切って効率化しましょう。
また、家事をするのに使っている家電製品が古いと、その分人間が動かなくてはならなくなるので、家事の負担増につながり身体的・精神的に疲れる原因にもなります。
もし、金銭的に余裕があれば思い切って
- ロボット掃除機
- 洗剤自動投入・乾燥機能付きの全自動洗濯機
- 食器洗い乾燥機
などの便利家電を導入するのも、家事の効率化やエネルギーの温存に役立ちます。
スイッチ1つで家事が終われば、疲れることなく進められますね
うつ病で家事ができない時の乗り切り方⑤ 家族か友人の助けを借りる
もし、あなたに助けを借りられそうな家族か友人がいれば、助けを借りることも選択肢の1つとして考えましょう。
これまで、誰にも頼らずに頑張ってきた人は、誰かに頼るということに申し訳なさを感じるかもしれません。
親も忙しいのに簡単に頼るのは申し訳ないよ…
でも、困難は誰にでも起こりうること。
家事の負担を減らしてエネルギーを温存するためにも、時には思い切って家族や友人を頼り、感謝の気持ちだけ忘れないようにしましょう。
恩返しはしっかり休んで元気になってから!
私は実家暮らしでしたが、うつ病があまりに辛いときは母に家事を任せていました。
ところが、私のうつ病が寛解して間もなく、母が手術のために入院。その後は体調と相談しながら母の分の家事の大半を引き受けるようにしました。
「恩返し」のタイミングは、意外と早く巡ってくるものかもしれません。
少しは母に恩返しできたかな…?
うつ病で家事ができない時の乗り切り方⑥ 家事代行サービスを利用する
- 助けを借りたいときに頼れる家族・友人がいない
- やらないといけないことが多すぎて家族や友人に頼みづらい
- プロにしっかり家事をしてもらいたい
という場合は、お金はかかりますが家事代行サービスの利用を検討してみましょう。
プロのスタッフが、おかずを何品もまとめて作ってくれたり、手が回らなかった部屋の掃除をしてくれたりするので、その間あなたは休めるようになります。
1回あたり数時間で安くても数千円はかかるので、毎週利用するのは経済的な負担も大きいかもしれません。しかし、1ヶ月に1回だけ利用するという形でも、家事の負担は減って楽になります。
実家暮らしをしていた期間が長い私は使ったことはないですが、1人暮らしの期間が長かったら絶対使います!
エネルギーが回復すれば、また家事はできるようになる
本記事では、うつ病で家事ができない時の乗り切り方を6つ紹介しました。
- 先延ばしにする
- まず少しだけやってみる
- 家事のハードルを下げる
- 効率化する
- 家族や友人の助けを借りる
- 家事代行サービスを利用する
うつ病になって、これまでこなしてきた家事ができなくなってしまうのは悲しいことですよね。
私自身、家事ができなくなったとき
「私は馬鹿になっちゃったの…?」
「他の人はしっかりやっているんだから、私もこのくらい頑張らないと」
「家事ができない状態がずっと続くのかな…」
等と考えてしまい、落ち込みました。
でも、大丈夫。家事ができないのは、エネルギーの減退による、本当に一時的なもの。
エネルギーが回復すれば、少しずつですが以前のように家事をこなせるようになります。
家事ができなくなった私も、今では毎日料理や洗濯ができています!
掃除は元々苦手なのでぎこちないままですが…
「完璧にやろう」「1人で頑張ろう」という気持ちは一旦置いておいて、今回紹介した6つの乗り切り方のうち、できるものだけでも実践してみましょう。
読んで下さったあなたの「家事ができない苦しみ」が軽くなりますように。